コラム

2025-10-31 16:36:00

2025年10月30日発表 「日銀、政策金利を0.5%に据え置き」 住宅ローン金利はどうなるの?

 

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<はじめに>

マイホーム購入を検討中の方にとって、金利動向は「購入のタイミング」や「返済の安心感」を左右する重要な要素です。特に都市部の中古マンション購入を視野に入れておられる30〜50代の方にとっては、「今の金利水準」「これから上がるか下がるか」「どう備えるか」を理解しておくことが、後悔しない住宅ローン選びにつながります。

2025年10月30日、日本銀行(以下、日銀)は政策金利を0.5%に据え置くと発表しましたが、ここではまず「日銀の政策金利」を軸に、現在の住宅ローン金利の状況を整理し、不動産エージェント及びFPとしての見地から今後を見通し、そして具体的な対策について考えてみましょう。

 

政策金利の現状と日銀のスタンス

まず、政策金利・日銀の動きを押さえておきましょう。

・日銀は現在、「無担保コール翌日物金利」が 約0.5%程度 となるように誘導しています。

・2025年1月には、日銀が長らく続けてきた大規模な金融緩和策(低金利・マイナス金利・イールドカーブ・コントロール等)からの転換を意識し、0.5%への引き上げが行われました。 

・日銀総裁の見通しとして、賃金の上昇を根拠に「持続的な物価上昇=インフレ率2%程度」の定着を確認できれば、追加の利上げに踏み切る可能性があるという姿勢が示されています。 

・一方で、海外経済の不透明感・為替変動・賃金の伸びの鈍さなどを理由に、急速な利上げには慎重な姿勢を維持しています。

このため、現時点では日銀の政策金利は「上昇フェーズの初期/じわりと上がる可能性あり」くらいの見通しが妥当でしょう。

 

住宅ローン金利の現状と傾向

次に、住宅ローン金利がどのあたりにあるか、最近の傾向を整理してみます。

・変動金利:主要行の優遇金利は0.6~0.7%台で据え置きが多い。ただし、一部銀行では+0.15%~+0.25%の上昇の例もあり。

   固定金利:主要銀行の10年固定は1.7~2.2%台が中心で、前月比+0.04~0.15%の上昇。フラット35(21~35年、団信あり、自己資金10%以上)は1.89%で先月から据え置き。

・2024〜2025年にかけて、金利は歴史的な低水準から若干上昇しつつあります。「低金利=もう下がらない可能性が高く、上がる可能性あり」という見方が出てきています。 

・また、住宅ローンを選ぶ際「変動型ローンが依然として多数派」というアンケート結果もあります。例えば、2025年の調査で変動型ローンを選択している人が約79%という数値が出ています。

つまり、住宅ローン金利は「底を打ったか」「これからは上昇余地があるかもしれない」という段階に入りつつあります。

 

今後の金利予測

それでは、「政策金利・住宅ローン金利がこれからどう動くか」という予測を、公開情報を元に仮説に基づいて整理してみます。

 

◇政策金利(日銀の誘導金利)

・日銀は賃金上昇と物価上昇(特に賃金が物価上昇を上回るような状態)を確認したうえで、追加利上げに踏み切る可能性があります。実際、報道では「年内(10〜12月)に0.75%まで上げる可能性がある」との見方もあります。 

・ただし、利上げペースは緩やかであると予想され、短期間で大幅に金利が跳ね上がるというシナリオは今のところ低めに見られています。

・したがって、2025年末から2026年初めにかけて0.5%→0.75%(あるいは0.6〜0.7%)へ上昇する可能性、あるいは0.5%で当面据え置き、2026年にかけて上昇というシナリオが有力と考えられます。

・長期的(数年先)には、1%超の誘導金利水準が視野に入る可能性もあります。 

 

◇住宅ローン金利

・政策金利が上がると、銀行等の調達コスト・長期金利・貸し出しマージン等が影響を受け、住宅ローン金利も上昇する方向が想定されます。固定型ローン・変動型ローンともに上昇リスクがあります。 

 

・変動型ローンは政策金利・短期金利の影響を受けやすいため、日銀の追加引き締めがあると比較的早く反応する可能性があります。

 

・10年固定など長期固定ローンは、長期債(例えば10年国債利回り)の動きやマージン設定次第ですが、現状2%台前半から中盤という水準。これが「3%近辺」あるいはそれ以上に向かう可能性も想定できます。実際、過去の水準では3%台という時期もありました。

 

・したがって、住宅ローン金利も「今から1年〜2年間でゆるやかに上昇する可能性が高い」と見ておくほうがリスク管理としては適切です。

 

シナリオ整理

・ベースケース(最も可能性が高い):2025年末~2026年前半に政策金利0.5%→0.6〜0.7%程度へ上昇。住宅ローン変動型金利0.7~1.0%水準が1.0~1.2%へ、10年固定ローン2.2%が2.5~3.0%へ上昇。

 

・ハイリスクケース(インフレ進行+賃金上昇加速):政策金利0.75%以上、住宅ローン変動型1.2~1.5%、10年固定ローン3%以上。

 

・ローリスクケース(景況悪化・賃金停滞):政策金利据え置き0.5%維持。住宅ローン金利も現状水準あるいは微上昇にとどまる。

 

結論としては、「金利の上昇余地あり+下がる可能性は極めて低い」というのが現在の実務的な見方です。

 

住宅購入を検討している方への具体的な対策

金利動向を踏まえ、購入検討時・ローン契約時・返済中において押さえておきたいポイントを「事前」「契約時」「返済中」の3段階に分けて整理します。

 

◇【事前】購入検討段階での準備

1. 返済シミュレーションを「金利上昇想定」で行う。

現在の低金利水準だけで安心せず、変動・固定それぞれ「2〜3年後に+0.3〜0.5%」「10年固定が2.5〜3.0%」という目線で試算することが大切です。

 

2. 頭金をある程度確保して、返済負担率を低めに設定。

金利が上がっても支払い余裕を持てるよう、返済負担率(年間返済額 ÷ 年収など)を保守的に見積もっておくほうが安心です。

 

3. 借入期間の設定を慎重に。

例えば35年ローン等の長期間借入は月々の返済額を抑えられますが、長期金利上昇・返済総額増大のリスクもあります。場合によっては30年以下を検討するのも手です。

 

4. 変動型・固定型のメリット・デメリットを理解する。

・変動型:金利低めだが、将来上昇リスクあり。

・固定型(特に10年・20年固定):金利は上がるが返済額が安定。

購入目的(住み続けるか転売を視野に入れるか)・ライフプラン(子育て・転勤可能性など)に応じて慎重に選ぶ必要があります。

 

5. 物件選びも「金利上昇を乗り切れる価格帯か?」を意識する。

例えば、物件価格が高めでローン借入額も大きい場合、金利上昇時の返済負担が相対的に重くなります。立地・築年数・資産性等を含めて慎重に見極めましょう。

 

◇【契約時】借入条件決定のとき

1. 固定金利期間をどのくらい取るか慎重に。

10年固定などを選択できる場合、「今後数年間は金利上昇局面」という見方をするなら固定期間ありが安心感を高めます。

 

2. 金利引下げ・優遇条件の見逃しなしで。

金融機関によっては「頭金×%」「勤続年数」「収入枠」などで優遇があるので、条件をよく比較・交渉しましょう。 

 

3. 変動型を選ぶ場合は「金利上昇ストップ時の上限想定」を確認する。

金融機関が「何%を超えたら金利改定頻度を変える」といったルールを設けている場合もあります。

 

4. 返済計画の余裕を持っておく。

例えば「金利+0.5%」という仮定でも返済できる余裕があるか、ボーナス返済・繰上げ返済余力なども含めて返済計画を設計しましょう。

 

◇【返済中】リスク管理と見直し

1. 金利上昇の兆しに敏感になる。

日銀の政策金利変更・10年国債利回りの上昇・金融機関の住宅ローン金利引上げなどは、変動・固定ともに金利上昇の前触れです。2~3ヶ月に一度、借入先の金利動向をチェックしましょう。

 

2. 変動型の場合、一定期間ごとに固定への切替を検討。

特に「金利明らかに上昇トレンドに入ってきた」と感じたら、固定への切替・借換えを検討するタイミングです。

 

3. 繰上げ返済・ボーナス返済を活用して、ローン残高を早めに減らす。

返済総額を抑えるため、余裕があれば早期返済も有効です。ただし、ライフプランを見通しながら計画的に検討しましょう。

 

4. 収支の見直しを定期的に。

賃金が上がる見通しがあっても、家計の支出やライフイベント(教育費、自動車、介護など)で返済余力が落ちる可能性があります。毎年の家計予測を更新しておきましょう。

 

5. 長期固定を選んでいる場合でも、返済途中での条件見直しを意識。

例えば、借入期間短縮や返済額減額のオプション、金利引下げキャンペーンが出た場合には相談してみましょう。

 

都市型マンション購入者としての視点(福岡市中央区など)

福岡市中央区などの都市型マンション購入を検討される30〜50代の方にとって、金利上昇対策は特に次の点が重要です。

 

・都市型マンションは立地・資産性が高い一方で価格水準も上がりやすい傾向があります。借入額が大きくなりがちなので、金利上昇の影響も大きくなります。

 

・転勤・ライフスタイル変更(例:在宅勤務・二拠点生活)など不確定要素がある世代です。変動型を選ぶなら「転勤リスク」「売却タイミング」もあわせて考えておきましょう。

 

・購入後の資産価値・将来売却を視野に入れた場合、金利が上昇したときの「返済負担の増大」が残債比率に影響を与え、売却・住替えタイミングを難しくする可能性があるため、返済設計は保守的に構えておくほうが安心です。

 

・福岡市中央区エリアでは、交通・生活利便・将来の再開発可能性などプラス材料がありますので、「多少金利が上がっても資産価値で支えられる物件」という観点も重要です。金利だけで焦るのではなく、物件選び・返済設計・ライフプランを総合的に見ておきましょう。

 

<まとめ>今考えておきたい3つのキーワード

最後に、今回の金利動向予測の内容を踏まえて「今から考えておきたいキーワード」を3つ挙げておきます。

1. 「上昇余地あり」

金利は今すぐガクンと跳ね上がるわけではないにせよ、現在の低水準からゆるやかな上昇に向かう可能性が高いという見方が現実的です。

 

2. 「返済余力を」

金利上昇時にも安心して返済できるよう、借入額・返済負担率・頭金・返済期間などを保守的に設計しておくことが、都市型マンション購入者には特に重要です。

 

3. 「金利タイプとライフスタイルの整合性」

変動型・固定型どちらを選ぶかは、購入目的・住み替え可能性・売却の可能性・家族構成の変化などライフプランに合わせて検討するべきです。金利が上がったときにも対応できる設計を目指しましょう。

住宅購入は人生の大きな選択です。特に都市型マンションは価格・立地ともに魅力がありますが、その分「金利上昇リスク」「返済設計の見通し」が重要になります。今後の政策金利・住宅ローン金利の動きを見ながら、冷静かつ前向きに「今・準備・将来」の3ステップを意識して、安心できるマイホーム取得をサポートさせていただければと思います。

住宅ローンのご相談やシミュレーションのご希望があれば、ぜひお気軽にご連絡ください。ご一緒に最適な住宅ローン設計を考えてまいりましょう。

  

※金利動向予測に関しては、公開情報を元に不動産エージェント及びFPとして私見も含め見通したもので、実際の金利推移は日銀の政策金利等によって変動します。