コラム
「増分主義」から、「減分主義」へ。 ストック活用と選ばれる新築住宅とは?
昨日のFacebookの「思い出」に、今から8年前(ちょうど宅地建物取引士として登録した頃)のブログのシェアが表示されました。代表を務める広告代理店のWEBサイトに掲載した記事です。タイトルは『「増分主義」から、「減分主義」へ。 ストック活用と選ばれる新築住宅とは?』
当時から住宅会社や不動産会社のクライアントも多く、人口が減少し世帯構成が変容するこれからの日本の住宅市場の行く末に多大な関心があって、本屋さんでたまたま見つけた野澤千絵さんの著作「老いる家 崩れる街」を読んでかなりショックを受けて書いたものです。
すでに専門家や多くの方が「ストック住宅の流通活性化」を提唱していましたが、現実は掛け声の域を出ず、また日本人の根強い「新築信仰」もあり、なかなかストック住宅の利活用が進んでいないように感じていました。
しかし、昨今の新築住宅価格の高騰の影響で、ストック住宅(中古住宅)へも目を向けられるようになり、住宅取得の現実的な手段として流通が増えてきています。個人的にはインスペクション(建物状況調査)制度が普及して安心して中古住宅の売買ができるようになればいいなと思っています。住宅・不動産業界自体もそうですが、国も行政も本気になってストック住宅の正常な流通活性化へ向けてもっと様々な制度面を充実させていく必要があるでしょう。不動産エージェントとしてはなはだ微力ではありますが、良好な中古住宅を多くの方にご案内できればと思っています。
再掲載にはなりますが、以下全文引用しますので、ご興味のある方はチェックしてみてください。
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「増分主義」から、「減分主義」へ。 ストック活用と選ばれる新築住宅とは?
昨年末、たまたま手にとった「老いる家 崩れる街」(野澤千絵著)はかなり衝撃的だった。最新号の住宅関連業界の業界紙「新建ハウジング」でも2ページにわたり紹介されている。
今週の週刊「東洋経済」でも「持ち家が危ない」というかなりセンセーショナルな特集を組んでいる。「マイホームが負動産になる」という副題までついている!
少子高齢化による空家問題・住宅過剰問題等、身近な事例も含めてこれまでの住宅業界が多くの矛盾を孕んでることに、驚きと焦りを禁じえない。
また「老いる家 崩れる街」では、作り続けられる超高層タワーマンションや郊外型新築住宅・賃貸集合住宅の孕む問題も報告されており、広告という側面ではあるが住宅・不動産業界にかかわりを持つものとして、かなりショッキングな内容だった。
これは、戦後ずっと経済が拡大することを前提にした政策「増分主義」=「満足化の追求」が採られ、新規の投資分のみに着目した様々な施策が行われ、いままでのストックに関しては置き去りのままだったという結果がもたらした大変由々しき大問題である、とも指摘している。
住宅の分野では、住宅ストックが世帯数を上回ったにもかかわらず新築至上主義は改められず、なんと既存住宅の建替え率は日本では10%ほどとのこと。
住宅会社や不動産会社は売れるからと、田んぼや畑、野原、山林を虫食い的に開発し、郊外型住宅として都心部より安価な住宅を供給し、購入者も庭付き車庫付きの一戸建てがコスパよく手に入れられるとあって、都心部から郊外へ越していく。
行政としては、そこには新たに生活に必要なインフラを用意しないといけない。縮小する財政にとっては重たい投資であろう。しかし、行政区の人口増を意図して市街化調整区域の規制緩和を進めたのも行政なのだから、自業自得ともいえる。
音頭をとってストック住宅の流通活性化に乗り出したが、現実はまだまだこれからといったところ。住宅業界だけの問題ではなく、先述した国や行政の制度や仕組みづくり・運用面でも難があったことも否めないだろう。
また道路や橋、トンネル、水道・下水施設等、社会インフラは高度成長期に次々に新設され、ここにきて老朽化のせいで各地で事故が頻発しているのはご承知の通りだ。
これから加速度的に進行する人口減、世帯数減の社会を迎え、いわゆる「減分主義」へ早く舵をとり、住宅を含めた既存の社会ストックをしっかりメンテナンス・維持管理していかないと、将来世代へ大きなツケ(代償)を残すことになりかねない。
※「減分主義」=最適化の追求という原則の元、既得権益の見直しにも踏み込みながら、何を削減するかが議論の対象となること(「老いる家 崩れる街」よリ引用)。
特に住宅・建築産業としては過分なストックを持ちながらいまだに「スクラップ&ビルド」を繰り返してる現状を十分に検証吟味し、これからの私たちの社会的な使命として、既存住宅・建築物を良好な資産として将来世代に引き継ぐことこそ、今を生きる私たちが意思決定し、今実行しなければいけないことだと思う。
このようなストック活用時代においても新築住宅のニーズがなくなるわけではないが、限られたパイを各社が奪い合う構図はより激しさを増すであろう。では、どのような新築住宅が選ばれるのであろうか?
少なくとも耐震性や省エネ・断熱等の性能の重要性は高まるであろうが、ライフスタイルの実現やコスパの追求等、より多様化した住宅取得層に「どうピンポイントで刺さるか」がキモになってくるだろう。
そして、魅力ある街、つまりマンション同様「立地」が決め手になるのではないだろうか、とフンでいる。
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※広告代理店WEBサイトにブログとして掲載(2017年1月25日)した全文の再掲載です。
https://cubic-re.co.jp/blog/2266
