コラム
地価も金利も上がる時代、福岡で家を買うなら「予算配分」を考えよう ― 2026~2027年、ムリのない住宅取得を考える ―
「福岡市内で家を買いたいけれど、最近は住宅価格が高くなった」
「これから住宅ローンの金利ももっと上がるのではないか」
2026年、住宅購入を考えている方からすると、気になる材料がいくつも出てきています。
土地価格は上昇を続けていますし、これまでの低金利を前提とした住宅ローン環境にも変化が見え始めました。
では、これから福岡市とその近郊で家を買う人は、住宅購入をどう考えればいいのでしょうか。私は、いままでの住宅購入の常識をリセットして、「限られた予算を、どこに使うのか」という考え方にシフトしていくことが、これまで以上に重要になると思っています。
福岡の地価は上昇中。ただし、上昇率は鈍化している
2026年9月、福岡県が「令和8年度福岡県地価調査」を公表しました。
県内の住宅地は前年比2.1%の上昇となり、10年連続で上昇しています。
ただし、前年の上昇率は2.7%でした。
福岡市についても、2026年度の住宅地は前年比5.5%上昇しましたが、前年の7.2%からは上昇幅が縮小しています。
つまり、福岡の住宅地は依然として値上がりしているものの、「上昇が続いている」ことと「上昇の勢いがそのまま続いている」ことは別だということです。
福岡市の住宅地平均価格は23万800円/㎡。
区別に見ると、中央区50万9,200円/㎡、早良区27万5,900円/㎡など、同じ福岡市内でも価格水準には大きな差があります。
近郊にも差があります。
2026年度の住宅地変動率は、粕屋町6.6%、福津市4.5%、糸島市4.3%、春日市4.2%、大野城市4.0%などとなっています。
一方、筑紫野市は1.0%、宗像市1.2%、小郡市1.3%。
「福岡市内は高く、郊外は安い」という単純な構図ではなく、どの地域で、どのような住宅需要があるのかによって価格の動きも違うことが分かります。
これから家を探す人にとっては、行政区分だけでなく、通勤・通学、買い物、交通手段などを含めた「生活圏」で考えることが重要になってきます。
そして、もう一つ大きく変わったのが金利です
地価と並んで、住宅購入を考えるうえで無視できないのが住宅ローン金利です。
2026年9月18日、日本銀行は金融政策決定会合で政策金利を0.25ポイント引き上げ、無担保コールレートを1.25%程度とすることを決定しました。
住宅ローン金利は日銀の政策金利と一対一で連動するわけではありません。変動金利と固定金利でも仕組みが異なります。
それでも、住宅ローンを取り巻く環境が変化していることは、購入を考える人にとって意識しておきたいところです。
例えば、福岡銀行の2026年9月の住宅ローン基準金利は、変動金利3.725%。一定の条件を満たした場合の優遇金利は1.525%となっています。
一方、長期固定金利型のフラット35では、2026年9月、返済期間21年以上35年以下・融資率9割以下の場合、最も多い金利が年3.460%でした。
もちろん、実際に適用される金利は金融機関、借入条件、融資率などによって異なります。大切なのは、具体的な金利の数字そのものよりも、
「今の低い金利が、住宅ローンの返済期間中ずっと続くとは限らない」という前提で資金計画を考えることです。
「金利が上がる前に買う」より、金利が上がっても困らない買い方を
金利が上がると、「今のうちに買ったほうがいいのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、住宅は数千万円単位の買い物です。
少し金利が低いタイミングで購入できたとしても、そのために予算を大きく超える住宅を購入してしまえば、元金そのものが大きくなります。
反対に、金利が多少上昇したとしても、借入額を抑え、家計に余裕を残しておけば対応できる可能性があります。
ですから私は、
「金利が上がる前に急いで買う」より、「金利が上がっても返済できる金額で買う」
という考え方が大切だと思っています。
変動金利を選ぶ場合も、現在の金利で返済できるかだけではなく、金利が上昇した場合の家計まで確認しておく。
固定金利を選ぶ場合も、金利上昇リスクを抑えられる一方で、当初の返済負担がどうなるのかを確認する。
「変動か固定か、どちらが正解か」ではなく、自分の家計がどこまで金利変動に耐えられるかを考えることが大切です。
住宅予算は「借りられる金額」ではなく「暮らし続けられる金額」
ここからが、これから住宅を買う方にとって一番大切なところです。
住宅ローンの審査に通る金額と、無理なく返済できる金額は同じではありません。
住宅を購入すると、ローン以外にもお金がかかります。
戸建てなら固定資産税、火災・地震保険、外壁や屋根、給湯器などの修繕費。
マンションでも固定資産税はもちろん、管理費、修繕積立金、駐車場代など。
さらに子どもの教育費、車の買い替え、旅行や趣味、老後資金などの費用も準備しておく必要があります。
そこで住宅予算を考えるときは、
「いくら借りられるか」ではなく、「住宅にかける費用をいくらまでにしたら、これからの生活を維持できるか」
から考えてみてください。
ここでいう住宅費はローン返済額だけではありません。
購入時の諸費用や前述した税金、保険、維持管理費まで含めた「住まいにかかるお金」として考えることが大切です。
現場で感じるのは「希望条件を全部叶えようとすると予算が合わなくなる」という現実
実際に住宅購入の相談を受けて現在の市場動向をお伝えすると、皆さん大体ため息をつかれます。物件価格上昇と住宅ローン上昇が主な要因で、それまで思い描いていた「夢」と現実との乖離に直面するからです。
それは、住宅購入そのものの希望が無理になったというより、
これまで普通に考えられていた条件を全部組み合わせると、予算とのズレが生じやすくなった
ということです。
例えば、
「福岡市内」
「駅徒歩15分以内」
「新築戸建て」
「4,000万円前後」
「駐車場2台」
「90㎡以上」
といった条件です。
一つひとつを見ると、どれも現実離れした無理な希望ではありません。
ところが、これを全部叶えようとすると、土地価格や建築費の影響を受け、予算に収まりにくくなります。
実際の相談でも、希望条件をお聞きして物件を探していくと、どうしても予算との間にズレが出てくることがあります。
そんなとき、私は「では、どの条件なら外せますか?」という聞き方ではなく
「この中で、一番大切なのはどれでしょうか?」とお聞きして
一緒に考えてもらうようにしています。
例えば、
「子どもの学校区は変えたくない」
のであれば、エリアは優先する。
「夫婦ともに通勤時間を短くしたい」
のであれば、駅からの距離を優先する。
「休日は家でゆっくり過ごしたい」
のであれば、多少駅から離れても広さを優先する。
「新築にはそれほどこだわらない」
のであれば、中古住宅まで広げることで選択肢が増えるかもしれません。
こうしてお話をしていくと、最初は「全部必要」だと思っていた条件の中にも、
「なくてもいいもの」
「できれば欲しいもの」
「これは譲れないもの」と
と整理されてきます。
これは、条件を削って我慢するという話ではありません。
限られた予算の中で、そのご家族にとって大切なものを明確にする作業です。
私は、ここに不動産エージェントが一緒に考える意味があると思っています。
住宅選びは「予算配分」と考える
例えば4,000万円の予算を設定するとします。
その4,000万円を、
「駅から近いこと」
に多く配分するのか、
「土地の広さ」
に配分するのか、
「新しい建物」
に配分するのか、
「住宅ローンの借入額を抑えること」
に配分するのか。
考え方はそれぞれです。
駅徒歩10分を15分にすることで、住宅価格が変わるかもしれません。
新築に限定せず中古住宅まで広げれば、立地の選択肢が増えるかもしれません。
福岡市内だけでなく近郊まで広げれば、土地や建物の広さを確保できるかもしれません。
逆に、通勤時間が何より大切なら、多少狭くても駅に近い住宅を選ぶという考え方もあります。
つまり、
「新築か中古か」「駅近か郊外か」という二択ではなく、限られた予算をどこに配分するか。
これが、これからの住宅選びでは重要な考え方なのではと思います。
中古住宅は「安いから」ではなく、選択肢を広げるために見る
この考え方をすると、中古住宅の見え方も変わってきます。
中古住宅の魅力は、単純に「新築より安い」ということだけではありません。
例えば、
「駅に近いことを優先して築年数を受け入れる」
「同じ予算で、より広い住宅を探す」
「状態のよい中古住宅を購入して、必要な部分だけ手を入れる」
という選択もできます。
もちろん、中古住宅なら何でもよいわけではありません。
建物の状態、耐震性、雨漏りやシロアリの有無、給排水設備、リフォーム履歴、道路や土地の条件、ハザード情報など、確認する項目は新築以上に増えることがあります。
だからこそ、中古住宅は「安い物件を探す」のではなく、
「自分たちにとって必要な部分に予算を使うための選択肢」
として考えてみると面白いのです。
郊外を選ぶなら「安さ」だけでなく、暮らしのコストを見る
同じことは郊外にも言えます。
福岡市内より土地価格が抑えられる地域がある一方、郊外に住むことで車が2台必要になれば、住宅価格だけでは見えない負担が増えることがあります。
通勤時間が長くなれば、時間そのものがコストになります。
子どもの習い事などの送迎時間や回数が増えることもあります。
一方で、土地や住宅を広くできたり、駐車場を確保しやすかったり、周辺環境を含めて暮らしやすくなるケースもあります。
だから、「郊外だから安い」ではなく、「生活利便性や住宅費と生活費を合わせるとどうなのか」を検討する必要があります。
これは物件価格だけを比較していては分かりません。
10年後の「選択肢」も残しておく
もう一つ、実需で住宅を購入する場合でも考えておきたいのが、将来の売却です。
何が何でも「10年後に値上がりする家」を探す必要はありません。
不動産価格の将来を正確に予測することはプロにもできないからです。
ただ、「10年後に売ることになったら?」とは考えておきたいものです。
転勤、転職、子どもの進学、家族構成の変化など、購入時には想像していなかった事情が起こることはあります。
そのとき、「自分たちが気に入っている」だけでなく、「この立地、この価格、この建物なら、次に必要とする人がいるだろうか」
という視点があると、将来の選択肢を残しやすくなります。
これは資産形成目的で住宅を買うという意味ではありません。
「住み続けることも、売却することもできる」という将来の選択肢を担保しておく
という考え方です。
2026~2027年、「待つか買うか」ではなく「どう買うか」
現在の福岡の住宅市場を見ると、住宅購入を取り巻く環境が以前より簡単ではなくなっているのは確かです。
地価は上昇しています。
ただし、上昇率は縮小しています。
そして金利については、日銀が2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げました。今後の金融政策についても、経済・物価・金融情勢を見ながら判断されることになります。
こうした状況では、
「価格が下がるまで待つ」
「金利が上がる前に急いで買う」
という二択で考えないほうがよいでしょう。
住宅を買うタイミングには、価格や金利だけでなく、家族のライフステージも関係するからです。
子どもの入学。
家族が増える。
職場が変わる。
賃貸住宅では手狭になった。
将来の住まいをそろそろ決めたい。
そうした事情も含めて、自分たちにとって本当に購入する意味があるのかを考える必要があります。
「ちょうどいい家」は、人によって違う
住宅購入について相談を受けていると、「どの物件がおすすめですか?」と聞かれることがあります。
しかし、住宅市場に「おすすめの物件」が先にあるわけではありません。
その人にとって、
「何を大切にしたいのか」
「毎月のローンがいくらなら無理がないのか」
「将来どんな暮らしをしたいのか」
等によって、選ぶべき住宅は変わります。
駅近が最優先の人もいれば、広さが重要な人もいます。
新築に価値を感じる人もいれば、中古住宅の立地を優先したい人もいます。
福岡市内に住むことが大切な人もいれば、少し郊外に出ることで実現できる暮らしを選ぶ人もいます。
だからこそ、「みんなが選んでいる家」ではなく、「自分たちにとって無理なく暮らせる家」を探すことが大切なのだと思います。
まとめ―住宅購入は「いくらの家」ではなく「どんな暮らしに、いくら使うか」
2026~2027年の福岡で住宅を購入するなら、地価と金利の両方を意識する必要があります。
福岡県の住宅地は10年連続で上昇していますが、2026年度は上昇率が縮小しました。福岡市も上昇を続けながら、前年より伸びは鈍化しています。
一方で、日本銀行は2026年9月に政策金利を1.25%程度へ引き上げました。住宅ローンについても、これまでの低金利だけを前提にした資金計画は見直す必要があります。
だからこそ、これからの住宅購入で大切なのは、
「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら無理なく暮らし続けられるか」。
そして、「どこを買うか」だけではなく、「限られた予算をどこに配分するか」。
この二つではないでしょうか。
新築か中古か。
駅近か郊外か。
広い家かコンパクトな家か。
もうどれか一つを正解にする必要はありません。
駅から少し離れても、家計に余裕を残す。
新築ではなく中古住宅を選んで、立地を優先する。
福岡市内にこだわらず、生活圏を広げてみる。
あるいは、多少住宅費が高くなっても、通勤時間を短くして家族との時間を大切にする。
どの選択にも、それぞれの意味があります。
大切なのは、その選択をした結果、住宅ローンを払いながら、その後の暮らしにも余裕を残せることです。
住宅購入は、「家」を買うことそのものが目的ではありません。
その家で、これからの人生をどう暮らしていくか。
そのために、どこに住み、どんな家を選び、いくらまでなら無理なく負担できるのか。
地価も金利も変化している今だからこそ、「買える家」ではなく、
「買った後も、無理なく暮らし続けられる家」を考えてみてはいかがでしょうか。
