コラム
全国的に人口減!2025年国勢調査から見る 福岡市・近郊エリアの住まいと不動産のこれから。
総務省が公表した2025年国勢調査のデータによると、日本全体が本格的な人口減少の局面を迎えていることが改めて明らかになりました。東京都を除く46道府県で人口が減少に転じており、将来の住宅需要や街の姿について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、この「全国的な人口減」という大きな波のなかで、少し異なる動きを見せているのが福岡市およびその周辺都市です。
福岡市の人口は前回調査から約5万1,500人増加し、約166.4万人となりました。人口増加率は21大都市(政令指定都市+東京都特別区部)の中で全国1位(3.2%増)を記録しています。九州内や全国から人や活気が集まる「地域の拠点」として、今もなお独自の成長を続けています。
この統計データを踏まえ、福岡市とその近郊エリアで今後住宅にかかわる市場にどのような変化が予想されるのか、不動産エージェントの視点から5つのテーマに分けて分かりやすく解説します。
1. 不動産価格への影響 ── 「価格の維持」と「エリアによる二極化」
全国的な人口減少は、住まいの買い手が減ることで不動産価格を下げる要因になりやすいと言われています。しかし、福岡都市圏のように人が集まり続けている地域では、価格が急激に下がりにくい環境が続くと見込まれます。
都市部マンション:底堅い需要と価格の高止まり傾向
福岡市中心部(中央区・博多区・東区)は人口増加率が4〜5%台と高く、住まいを探す方が絶えません。また「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」といった街の再開発が進んでいることに加え、建築資材や人件費の上昇も影響しており、新築分譲マンションの価格は高めでの推移が予想されます。これに伴い、人気の高い駅近くの中古マンションも価値が落ちにくく、価格が安定して推移する可能性が高いと考えられます。
周縁部・戸建てエリア:二極化が進む可能性
一方で、同じ福岡都市圏であっても、エリアごとの差(二極化)が出やすくなると見られます。地下鉄沿線やJR鹿児島本線などの主要な駅の近く(春日市、大野城市、福津市、新宮町など)は人口を維持しやすいため、不動産の価値も比較的安定して推移すると期待されます。
しかし、駅からバス移動が必要な旧住宅地や、将来的に交通インフラの維持が難しくなるような周縁エリアでは、空き家が増えたり地価が落ち着いていったりする傾向が少しずつ現れるかもしれません。
【根拠データ】
•総務省「2025年国勢調査」: 福岡市人口 約166.4万人(前回比+約5.15万人、増加率3.2%で大都市1位)。中央区(約5.2%増)、博多区(約4.8%増)、東区(約4.1%増)と中心部の伸びが顕著。
•国土交通省「2026年地価公示」: 福岡市および近郊主要駅周辺の住宅地価は継続して上昇傾向。
2. 住宅エリア評価への影響 ―「利便性重視の都心」と「暮らしやすさ重視の近郊」
住む人の暮らし方や世帯の形の変化によって、人気の集まるエリアの基準にも少しずつ変化が見られます。
福岡市中心部:単身・共働き層に人気の「都心回帰」
福岡市内では、人口の増え方以上に「世帯数」が増加しています(5年間で約5.3万世帯増)。これは一人暮らしや夫婦二人などの小規模な世帯が増えているためです。職場の近くで時間を有効に使いたい単身者や共働き(DINKS)層が増えたことで、中心部のコンパクトなマンションや賃貸物件の評価は今後も高く維持されそうです。
市外近郊エリア:子育て世代に選ばれる「アクセスと広さのバランス」
福岡市中心部の住宅価格が高めになっていることから、小さなお子様がいるファミリー層などでは「暮らしやすくて通勤もしやすい郊外」に目を向ける方が増えています。
特に以下のエリアは、福岡市へのアクセスと子育て環境のバランスが良く、住み替え先として根強い人気を集めています。
•南側エリア(春日市、大野城市、筑紫野市など): JRと西鉄の2路線が利用でき、福岡市南区や早良区周辺からの住み替え先として人気。
•東側エリア(新宮町、古賀市、福津市など): 区画整理された美しい街並みと大型商業施設があり、若いファミリー層に親しまれている。
•西側エリア(糸島市、福岡市西区九大学研都市など): 豊かな自然環境と都市へのアクセスの良さが両立しており、在宅ワークを取り入れる方などに人気。
【根拠データ】
•総務省「2025年国勢調査」: 福岡市の世帯数は約88.3万世帯(1世帯あたりの人数は1.88人に減少、単身化が進行)。
•自治体公表データ: 春日市(人口約11.1万人)、大野城市(人口約10.3万人)など周辺都市でも人口規模が安定して維持されている。
3. 都市機能の整備への影響 ── 住みやすいエリアへの機能集約
日本全体で人口が減っていくと、道路や水道などの公共インフラを維持するための行政コストが課題になってきます。そのため、これからの街づくりにも変化が出てくると予想されます。
コンパクトな街づくりの推進
行政は、生活に必要なお店や病院、福祉施設、交通網を主要な駅や幹線道路の周辺に集める「コンパクトシティ」の取り組みを進めています。これにより、サービスが充実した「拠点となる駅の周辺」と、そうでないエリアとの間で、生活のしやすさに少しずつ差がついていく可能性があります。
民間企業の投資の集中
商業施設やマンションを建てる企業側も、将来にわたって利用者や需要が期待できるエリアへ優先的に資金を投資するようになります。九州の中心地である福岡都市圏は、今後も商業施設やオフィス、住まいの整備が優先的に行われやすい地域と言えそうです。
【根拠データ】
•国土交通省「立地適正化計画制度」: 福岡都市圏の各自治体(福岡市、春日市、筑紫野市等)で居住誘導区域や都市機能誘導区域の設定・運用が進行中。
4. 住宅取得マインドへの影響 ―「資産価値」と「将来の安心」を重視する傾向へ
人口減少のニュースに触れる機会が増えたことで、家を探す方の考え方や意識にも変化が見られます。
「将来売りやすい・貸しやすいか」を意識する買い手が増加
「どこで家を買っても将来安泰」という時代ではなくなったからこそ、「将来もし引越すことになっても売れるか、あるいは賃貸に出せるか」というリセールバリュー(再販売価値)を重視して物件を選ぶ方が増えています。
住宅ローン金利と価格を踏まえた「堅実な選択」
金利の動きや物件価格とのバランスを考え、無理なローンを組むリスクを避ける傾向が強まっています。「少し狭くなっても資産価値が落ちにくい駅近くを選ぶ」「郊外であっても駅から近い中古マンションをリノベーションして賢く暮らす」といった、具体的で現実的な住まい選びが好まれるようになってきています。
【根拠データ】
•住宅金融支援機構「住宅ローン利用者調査」等: 住宅購入時の理由として「資産価値の維持」「将来の売却・賃貸可能性」を考慮する回答割合が上昇傾向。
5. その他の影響 ― 海外からの需要と広域での役割
2025年の国勢調査では、全国的に外国人の居住者が過去最多(約384万人)となったことも注目されています。
賃貸・売買市場のグローバル化
福岡市でもIT関連の人材や留学生など、海外から来て暮らす方が増えており、都心部の賃貸需要を支える要素の一つになっています。また、アジアの主要都市に近い地理的なメリットもあり、海外投資家からの注目度も比較的高い状態が続いていると考えられます。
九州内でのヒト・モノの集積
福岡都市圏に人が集まる現象は、九州の他の地域からの流入に支えられている面もあります。これは福岡の不動産市場にとって力強い追い風ですが、長期的には九州全体の経済や活力をどう維持していくかという視点も大切になっていきます。
【根拠データ】
•総務省「2025年国勢調査」: 全国の外国人人口は約384万人(前回比約38%増)。福岡市内の外国人住民数も着実に増加傾向。
•総務省「住民基本台帳人口移動報告」: 福岡県・福岡市は転入超過(入ってくる人の方が多い状態)を継続中。
最後にーこれからの時代に「不動産エージェント」が大切にしたい役割
2025年の国勢調査は、日本全体の人口減少という現実と、福岡都市圏のように人が集まるエリアの強さを同時に示してくれました。
このような変化の大きい時代だからこそ、家を売ったり買ったりする際の「不動産エージェント(担当者)」の役割は、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。
かつてのように「どこを買っても将来値上がりする」という時代ではありません。同じ福岡都市圏であっても、10年後・20年後に「暮らしやすさが維持される街」と「そうでない街」の差が少しずつ出てくる可能性があります。だからこそ、私たち不動産エージェントには、単に物件をご紹介したり手続きを行ったりする以上の例えば以下のようなサポートが求められているのだと思います。
•データと客観的な視点に基づくアドバイス: 人口の動きや自治体の街づくり計画などのデータをもとに、その物件が持つ将来の可能性や注意点をわかりやすくお伝えする。
•一人ひとりの暮らしに合わせた提案: 金利やご予算のご不安に寄り添いながら、「都心でコンパクトに暮らす」「郊外でゆったり暮らす」など、お客様それぞれのライフプランに合った選択肢を一緒に考える。
•将来を見据えた安心のパートナー: 今のお住まいの売買だけでなく、将来の住み替えや相続まで視野に入れた、末永いご相談相手として伴走する。
情報が簡単にたくさん手に入る時代だからこそ、あふれる情報の中からご自身にとって本当に必要なことを見極めるのは簡単ではありません。しかし、全国的に人口が減っていく時代においても、正しい情報と見通しをもって選べば、満足のいく住まい選びや資産づくりは十分に可能です。皆様が将来にわたって安心して笑顔で暮らせるよう、信頼できるパートナーとして寄り添い続けること―それこそが、これからの時代における不動産エージェントの本当の役割だと考えています。
※本コラムで参照・引用したデータ等は各種WEBサイトや公表資料によるものです。
転載ミスや読み違い等ありましたらご容赦ください。
